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保温調理って大丈夫?

美味しくできて光熱費の節約にもなる、と話題の「保温調理」。
レシピもたくさん見かけますが、お鍋のお湯に入れて保温してもちゃんと火が通るの?保温したまま一晩置いて、食中毒は大丈夫なの?
いろんな心配を実験で検証してみました。

あんあんくんと職員(女性)のイラスト
1

保温調理器を使った鶏肉の中心温度変化

鶏肉は真空パックにして、専用の保温機器で一定の温度のお湯に浸して鶏肉の中心温度の変化を計測しました。

  • 60℃設定
  • 70℃設定

意外なことに、中心温度は60℃設定の方が早く高くなり、設定した温度をキープしています。70℃設定の方は直線に近い上がり方でした。

では、鶏肉の中の様子はどうでしょうか。

60℃設定グラフ

120分後

中心は赤くて生の状態。

240分後

全体にピンクだけどもう少し火を通したいところ。

360分後

白っぽいピンク。
しっとりちょうど良いくらい。

480分後

しっかり加熱された状態。
ちょっとかため。

70℃設定グラフ

110分後

中心は赤くて生の状態。

220分後

まだ少し赤いところがある。

330分後

全体的に白っぽくしっかり火が通った感じ。少しぱさつきも。

440分後

しっかり加熱された状態。
ちょっとかため。

設定温度を低くした場合も見てみましょう

設定温度を低くした場合も見てみましょう

55℃設定グラフ

110分後

ほぼ生の状態。

220分後

まだ生のまま。

330分後

表面がうっすら白くなってきたけど、まだまだ生の状態。

440分後

全体的に白くなってきたところだけどまだ皮が生っぽい。

60℃設定で調理したところ、40分後では完全に火がとおる一歩手前の状態でした。60分後になると完全に火がとおり、80分後では硬くなってしまいました。

70℃設定では火の通りが早く、中が生の状態のうちに外側が硬くなってきました。中まで火が通ったころには鶏肉全体が硬くなりました。

55℃設定だと40分後でも生の部分が残るので、この温度帯は適切でないことがわかりました。

鍋や炊飯器ではどうなるのか見てみよう

あんあんくんのイラスト

鍋や炊飯器ではどうなるのか見てみよう

2

鍋を使った場合

鶏肉をポリ袋に入れて口を縛り、沸騰したあと火をとめた鍋で保温します。

条件1

鍋・フタあり・重石あり

20分後

40分後

60分後

条件2

鍋・フタなし・重石なし

20分後

40分後

60分後

保温調理を行う場合は、60℃以上の温度を保つことが大切です。
そのため、保温するためのお湯はグラグラと沸騰させて100℃になってから火を止めましょう。お湯の温度が下がらないように鍋にフタをして、鍋ごと保温することも大切です。
また、鶏肉がプカプカ浮かんでしまうので、お湯に浸かっていない部分は火がとおりにくくなります。お皿などで重石をして沈めると良いでしょう。

3

炊飯器の保温機能を使った場合

鶏肉をポリ袋に入れて口を縛り、沸騰したお湯を張った炊飯器の保温機能で調理します。

条件3

炊飯器・フタあり・重石あり

20分後

40分後

60分後

条件4

炊飯器・フタなし・重石なし

20分後

40分後

60分後

炊飯器を使う場合は、熱湯を入れると温度を保つことができるね

炊飯器を使う場合は、熱湯を入れると温度を保つことができるね

お湯の温度
鍋で保温 炊飯器で保温
【条件1】
フタあり・重石あり
【条件2】
フタなし・重石なし
【条件3】
フタあり・重石あり
【条件4】
フタなし・重石なし
20分後 77.0℃ 64.4℃ 77.0℃
40分後 68.8℃ 51.9℃ 75.0℃
60分後 62.5℃ 44.7℃ 74.0℃
鶏肉の中心温度
鍋で保温 炊飯器で保温
【条件1】
フタあり・重石あり
【条件2】
フタなし・重石なし
【条件3】
フタあり・重石あり
【条件4】
フタなし・重石なし
20分後 53.5℃ 54.5℃ 63.5℃ 61.0℃
40分後 67.5℃ 59.5℃ 71.0℃ 70.5℃
60分後 67.0℃ 53.0℃ 73.0℃ 73.0℃

条件2の場合、鍋のお湯の温度が一気に下がり、肉の加熱に必要な温度が得られませんでした。
その他の条件では時間をかければ肉の中心温度まで火がとおりました。

4

まとめ

一般的な食中毒菌は肉の中心温度が75℃で1分(またはこれに相当する温度と時間 例えば、70℃で5分、60℃で75分)以上になるように加熱することで「やっつける」ことができますが、保温調理の場合にはこれより低い温度になってしまうので、お湯の温度が下がらないようにしながら、時間をかける必要があります。
お肉に下味をつける場合は、細菌を「つけない」ために食品用の手袋を使うなど、直接手でさわらないように気を付けましょう。また、細菌を「ふやさない」ためにも、出来上がった料理をいつまでも温度が下がった鍋に入れっぱなしにしてはいけません。
すぐに食べない時は、粗熱をとってから冷蔵庫に保存しましょう。

職員(女性)のイラスト
食品安全推進委員 矢野先生から

保温調理では、全ての食中毒菌が死滅することはありません。例えば、豆類や穀類に付着している食中毒菌セレウス菌は死滅しませんので、食中毒の危険温度帯(20℃~45℃)を避けるために、速やかな冷却が必要です。また、55℃以下の保温調理は食中毒菌が増殖する危険性があるため、55℃以下の調理はやめましょう。

食品安全推進委員 矢野先生から

保温調理では、全ての食中毒菌が死滅することはありません。例えば、豆類や穀類に付着している食中毒菌セレウス菌は死滅しませんので、食中毒の危険温度帯(20℃~45℃)を避けるために、速やかな冷却が必要です。また、55℃以下の保温調理は食中毒菌が増殖する危険性があるため、55℃以下の調理はやめましょう。

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